Hokamura Design

2016年2月29日 15:15

住宅家具のデザイン

事務所を設立して1年が過ぎました。建築設計の仕事は、昨年中に手がけて現在も進行中のものもいくらか有りますが、まだカタチにしてお見せできることができません。今年はいくらかお見せできる予定ですので、是非ご覧頂ければと思います。

 

そんな中先日、Y邸の特注家具(キッチンボード)の設計施工が終了し、先日納品致しましたので、このお仕事をもとに、家具のデザインのプロセスをご紹介させて頂きます。

 

 

1。まずは大体の大きさや素材について、インテリアや使い方のイメージをお話ししながら方向性を見いだしていきます。
今回は、全幅2600mmで、奥行き550mm、高さはキッチンに揃えて850mmとしてデザインしました。当初は天板をステンレスとして、耐久性を高めることもお施主さんと検討しましたが、今回はリビングやダイニングの既存の木製家具に併せた色として、木のぬくもりや経年による風合いを楽しもうというコンセプトで、ご覧の通りのデザインとなりました。収納部分の割り付けについては、お施主さんと相談をして必要な収納の量や大きさを検討し、開き戸か引き出しか、またどの位の幅と高さか等を決定しました。

 

2。ここまでが大体決まったところで見積もりをお施主さんに提出します。天板の仕様や使用する樹種、収納内部の仕上方法等、仕様についての方針と金額を場合分けして比較します。この際に、制作に必要な大体の施工期間が把握できますので、仕様と金額を決定し、希望の納品日を確認します。時には、「こちらの家具をちゃんとつくりたいので、あちらの家具は次回にしたい」なんてことも、このときに決めます。
尚、この決定を元に家具屋さんは制作を始めるので、その後、普通は変更はできません。(たまにしますが。。)なので最終決定の内容について再度、図面やスケッチを見ながらお施主さんに確認をします。そしてそして、それを踏まえて家具屋さんにGO!を出します。

 

3。また、今回は仕上げを染色塗装としていますので、まずお施主さんに希望の色味や艶を、まさに設置する場所でサンプルの木片の中から選んでもらいます。そして実際に使用する木材に塗装をして仕上げをしたものを、後日工場からお送りし、最終的な色味を確認、決定します。

 

4。そして、最後に納品の日。大きな家具になるとその場で家具屋さんが組み立てを行います。今回は1時間程度でした。天板と収納(左)、収納(右)を組み合わせ、扉を設置して完成です。

 

と、大体こんなプロセスです。
今回の場合、最初の相談から納品まで年末年始をはさみ、大体3ヶ月程度でした。納期が厳密に決まっていた訳ではなかったので、時間をかけて様々な条件を検討をしました。お施主さんと私とのやり取りはメールと電話が主で、伺ったのは打合せ3回と納品で計4回です。

 

街を散歩しながら市販のものを探すのも確かに楽しいですが、単純に労力とその成果で考えると、特注する方が圧倒的に実がありますよね。求めているものにドンピシャのサイズとデザインの『市販の置き家具』に出会うというのは相当難しいものです。しかも大きなサイズの家具になると既製品でも高額で、妥協などはとても勇気が必要です。なかなか求めているものが見つからず、探し疲れて判断力が鈍っているときに無理矢理選んで「ぎゃふぅーんっ!!」なんてことになり、結局高くツくという経験をされた方もいらっしゃるかと思います。
そこで金額についてですが、市販のものに比べて特注の方がそりゃいくらかは高額ですが、一般的な仕様であれば驚く程の金額差にはならないし、耐久性が高くて使い勝手もフィットした、財産としての家具になります。市販の家具を購入した場合は、上記のようなリスクもあります。

 

勿論、“つなぎの消耗品”として特注品を購入するのは望ましく有りませんが、長く使われるつもりであれば、収納の勝手もデザインも、後悔しないようにご検討されることを強くお勧め致します。そうすることで、ご自宅はもっと、愛着のもてる、居心地の良い場所になります。

 

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